教育と平等と自由化
とても面白かったです。
教育財政の視点から、戦後教育がどのように「機会均等」を実現していったかを分析したものです。
手に入るデータをもとに物語を組み立てていく手法には、苅谷氏の思想•イデオロギーが全く表面化していません。
その語り口にしびれます。
ただ、中公新書からの前著「大衆教育社会のゆくえ」では、戦後教育が「教育の機会均等」を傘に、いかに不平等を見えなくしたor見てこなかったかを厳しく批判しています。
逆に今回は、戦後教育の、ある意味で「ポジティブ」な部分に注目しています。
集めるデータによって、何を語るか、が変わってくることが分かる、よい例だと思います。
内容についてはまた機会があればまとめるとして、本エントリでは、本筋とは外れますが、興味深かった話を書いておきます。
現在、戦後教育は、「画一主義」「詰め込み主義」「評価の一元化」などといって批判されることが多いです。
この反対として、教育における「個人の尊重」「個人化」が語られます。
しかし、この「個人化」も、よくみると複数種類に分類することができます。
それを示したのが、以下の図です。
これらは、一見同じ「個人化」を主張していても、そのベクトルはそれぞれ違う方向を向いています。
議論の際には、これらの違いをしっかり整理しながら、議論することが大切だと思います。
本エントリは、この違いの整理まで。