武蔵野市市民会議を傍聴してきました
前回、現代社会のコミュニティの在り方についてのエントリを書きました。
考えるだけでなく、実践も必要だと考え、実際に私の住む街の市民会議に参加してきました。
因みに、私は武蔵野市の住人です。
武蔵野市では、昭和46年から「武蔵野市方式」という市政運営システムを採用しているようです。
市政運営に当たって、市民参加を念頭においており、
・公募市民による長期計画策定会議
・無作為抽出市民によるワークショップ
・市長とのタウンミーティング
・NPO等市民団体との連携
など、様々な取り組みが為されているようです。
今回は、平成24〜33年までの第五期長期計画中における、調整計画市民会議を傍聴しました。
全5回中の第5回に当たり、「市民会議の振り返り」というテーマに関心を持って聴きました。
〜感想〜
16人の応募者の中から、作文等で選ばれた10人の市民の方々が委員として参加されていました。
まず率直な感想として、みなさんそれぞれしっかりとした意見をお持ちで、素晴らしい方々が集まっている、という印象を受けました。
草の根のレベルで、このような議論が為されていることに、とても嬉しい気持ちになりました。
以下、気になった意見を書いておきます。
まず、時間の制限が厳しかったというものです。
第2〜4回の会議では、健康・福祉、子ども・教育、文化・市民生活、緑・環境、都市基盤、行・財政について話し合われました。
一回につき、19:00〜21:00の2時間で2テーマ、つまり、1テーマ1時間です、
委員は全10名ですので、1テーマにつき最大1人6分。事務連絡等もありますから、1テーマにつき、一人一言、ふた言程度でしょう。
これでは、ただの意見交換になってしまって、議論にならない。
会議の報告書も意見の羅列になってしまって、内容が深まらなかった、という反省が多く聞かれました。
逆に言うと、みなさん、やはり委員の間でもっと議論がしたかったようです。
このような態度も、素晴らしいものだと思います。
修正案としては、もっとネットを活用できるのではないか、とのことでした。
特に、第4回〜第5回の間の期間には、メールによる議論が活発に行われたようでした。
今後は、メールによる議論の機会を設けていくとのことでした。
逆に考えると、市役所ではメールによる議論というのは為されないようですね。
関連して、私は、ネット掲示板による議論もあり得ると思います。
先駆的な例としては、民主党政権時代に、文科省のサイトで「熟議かけあい」という取り組みがありました。
私が実際に参加したわけではありませんが、鈴木当時副大臣の説明によると、教師、保護者などの学校関係者、当事者の生の意見を聞くことができて、効果が高いとのことでした。
いずれにせよ、インターネットの活用による熟議の場の設定が今後の課題と言えそうです。
(因みに、現在は「熟議かけあい」のサイトは運営されていません。下村さん...)
あとはやはり、無関心層や若者層を、いかに市民参加取り込むか、という問題意識が気になりました。
実は、第四期の長期計画策定の市民会議には、100人以上の市民が参加したようです。
ただ、今回の公募の応募者は16人。
おそらく、呼びかけ方法の違いなどの要因があると思いますが、この数字をどう見るか、というのをきちんと評価して欲しいと思います。
関連する意見で、「行政計画」ではなく「市民計画」であるべきだ、との意見がありました。
つまり、市民は計画段階に口を出してあとは放ってしまうのではなくて、実行段階もしっかり参加して、一定期間後に評価を行うまで、市民がしっかりコミットメントするべき、とのことでした。
こちらの意見にも、とても納得させられました。
〜私が考えたこと〜
無関心層の市民参加、実行段階へのコミットメントに関して、私が考えたことも記しておきます。
特に、若者がどうコミットメントしていくか、を考えます。
若者、という視点から見ると、実は、武蔵野市は大学が複数ある学術都市である一面を持っていると思います。
ブックオフを訪ねても、学術系の書籍が結構売られているのを見かけます。
つまり、武蔵野市政の中で、この大学生たちをいかに参加させていくか、というのが重要だと考えます。
以下で、2つアイデアを述べます。
1つ目は、大学と合同でイベントなどを開催することです。
例えば、学園祭に地域の方が参加できるようなイベントを設けて、大学で若者と地域の方が交流できる機会を作ったり、
音楽ホールで複数大学のコンサートを開いたり、
などです。
特に文化祭は、外部の方がたくさん来れば来るほど盛り上がると思うし、学術的なイベント、スポーツ的なイベント、ポップカルチャー的なイベント、など、多くの可能性があると思います。
また、文化祭とは別の日程で、イベントを用意してもいいでしょう。
例えば、市政に関する勉強会を行政側が開いて、行政の仕組みや武蔵野市の抱える問題などを議論し、コミットメント意欲を喚起することもできるかもしれません。
2つ目は、地域のコミュニティセンターを大学生に利用してもらうことです。
私の出身大学では、サークル活動は基本的には大学の施設を利用していました。
しかし、サークル数の増加に伴い、大学施設のサークル間による取り合いが発生しており、地域の施設を利用したいと思う団体も多かったと思います。
幸い、武蔵野市には複数のコミュニティセンターが存在し、一般に公開しています。
これを、大学生にももっと使ってもらったら良いと思います。
具体的には、
1.市外住民でも使えるようにすること
2.インターネットを通じて予約可能なシステムを作ること
が必要だと思います。
武蔵野市民に限らず、武蔵野市の大学生がコミュニティセンターなどの利用を通じて少しでも地域の方と交流する機会があれば、実際の武蔵野市民の学生も市政に興味を持ってくれるのではないでしょうか。
以上2点が、私が思いついたことです。
大学生の場合、卒業すると引っ越してしまう可能性が高いため、結局武蔵野市における若者参加とは、大学サークルと密接に関係した形で参加する仕組みにしないと、成功しないのかなと思います。
問題点としては、上の2点はアイデアベースの議論になってしまっていることです。
「なぜ若者は市政に参加しないのか?」という問いを立て、
問題解決の手順(仮設立てとそれをバックアップするファクト)を踏んで、立案する必要があると思います。
○ 意識の問題かシステムの問題か
また、このような議論をする場合に重要なのは、「意識・規範」の問題として捉えない、ということです。
「市民参加を呼びかけよう」「市政参加について教えよう」という姿勢では、結局無関心層は取り込めない、ということです。
そうではなくで、参加せざるをえないようななシステムをどう作っていけるか、ということを考えなければいけません。
なぜならば、意識というのは価値観の問題なので、「市政参加するのがよい」と考えるかどうかは個人個人の問題になってしまうからです。
その意識を、強制的に統制することはできないし、市民参加のそもそもの目的に反しています。
そうではなくて、その意識というのは、市政参加を通して一人一人が変容プロセスを通じて獲得していくものだと思います。
なので、参加せざるをえないシステム作りが、しなくてはならないことだと思います。
上で私が挙げた2点は、厳密にはこの「参加せざるをえないシステム」になっていません。
しかし、例えば学園祭でイベントを開いた場合、大学構内にあって大学生が誰も参加しないイベント、というのも想定しにくいでしょう。
そういう意味では、少しは大学生も参加することになるはずです。
このように、システムをどう変えていくか、というのを今後議論していく必要があります。
今回市民会議に参加してみて、地域のコミュニティに参加する、ということが、少しずつ実感できるようになってきました。
もうひとつだけ、気になった委員の意見を引用したいと思います。
それは、今後のビジョンとして、「他の追随を許さないような、魅力的な取り組みを行う自治体になりたい」という意見でした。
なるほど、その通りだ、と思いました。
つまり、武蔵野市が自治体として何らかの先駆者となり、ニュースなどで取り上げられたとします。
そして、そのような取り組みができたのは何故か、というと、その背景には
「市民参加」と「熟議」があったと分析されるとします。
そうすると、その取り組みは全国へ広がっていくでしょう。
そうすると、1人一人が自分事だと引き受けて、考え、参加する、という民主主義に、一歩近づくことになるでしょう。
武蔵野市には、それだけのポテンシャルがあるように思います。
今回の市民委員の方たちの発言を受けて、武蔵野市ならできるのではないか、という気持ちを持つことができました。
その、未来のビジョンまで見据えた上で、今後も市政にコミットメントしていきたいと思っています。
(ただし、私はいつ引っ越すかは分かりませんが...)