dm-mnbの日記

このブログでは、教育関係のことなどを中心に、調べたことや考えたことなどを書いていこうと思います。

キャリアプランとしての都立高校教師

東京都知事選は、順当に舛添さんの当選となりました。
前回の記事の表は、なんとなく主要な順かなぁというので作ったのですが、
そのままの順の開票結果となり、大方事前の予想通りだったようです。

教育政策については、舛添さんは「競争的」教育を目指すのに対し、
宇都宮さんは「非競争的」教育を推しているのが対照的でした。
舛添さんに決まったことで、実際教育改革にどこまで口を出すのかは分かりませんが、「競争的」な雰囲気は作られていくでしょう。

それはもちろん教員にとっても同様で、
教員の現場にも「競争」が組み込まれていくと思います。
というよりも、すでに導入が進んでいます。
ここ2日で、元都立高校校長が書いた、対照的な2冊を読みました。

○『東京の「教育改革」は何をもたらしたか - 元都立高校校長の体験から』(渡部謙一)

 

東京の「教育改革」は何をもたらしたか―元都立高校長の体験から

東京の「教育改革」は何をもたらしたか―元都立高校長の体験から

 

 


○『都立高校は死なず - 八王子東高校躍進の秘密』(殿前康雄)

 

都立高校は死なず―八王子東高校躍進の秘密 (祥伝社新書)

都立高校は死なず―八王子東高校躍進の秘密 (祥伝社新書)

 

 



前者は東京都の教育改革に批判的な著作、後者は教育改革を共に積極的に進めた校長の著作です。
僕は、どちらかというと前者の意見のほうが共感できる部分が多いです。
「日の丸・君が代」の押し付け、職員会議からの「協議」の喪失(挙手・採決の禁止)、上意下達の指示伝達による現場の声の無視、教職員間に格付けをすることによる「協働」の分離化、などなど
後者についても、トップダウンの構造なしにボトムアップの構造なし、などの主張は、本当かな?とは思いますが、少し理解できます。

自分で考えなおさなければならない論点をいくつか得ることができました。
特に、「日の丸・君が代」についてはしっかり自分で勉強し、納得したいと思います。
本エントリでは、キャリアプランにも繋がる、「教職員の階層化」についてまとめたいと思います。

東京都では、「メリハリのある給与体系」実現のために、教員の役職をどんどん分化していく人事制度が採用されています。
背景は、一部の教員に負担が偏る場合がよく見られる状況で、全員一律の給与体系には問題があるのではないかということです。
そこで、給与に「メリハリ」をつけ、教員の意欲活性化に繋げようということらしいです。

2003年(H.15) 「主幹」(教諭と教頭の間)の全校導入
2006年(H.18) 「これからの教員の任用制度について」
                    校長を「統括校長」と「一般校長」に分化
        教諭を「主任教諭」と「一般教諭」に分化
2012年(H.24) 「指導教諭」「教科主任」の導入


などの「改革」を行って、今の東京都教員組織の構成は

統括校長
校長
副校長(前の教頭)
主幹教諭、指導教諭
----------------
主任教諭
教諭

の6階層7役職になっています。
その他、専任でない(任期付きの)職として、専修実習助手実習助手が存在します。
キャリアアップしないでずっと教諭職だった場合、46歳からは給料が上がらない仕組みになっています。

 

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キャリアを上げていくには、各段階における任用選考に合格する必要があります。
どんな選考なのかなかなか分かりませんが、各段階の「任用試験」を受験するようです。

さて、それぞれの役職は何をするのでしょうか?

○主幹教諭
校長・副校長と教諭を結ぶ、「中間管理職」といわれます。
2008年(H.20)の「副校長・主幹教諭の育成及び職のあり方について」によると、
主幹教諭の職務は「監督」「人材育成」「調整」「校長・副校長の補佐」という4つの職責が付与されており、校長は、主幹に適切な校務を分掌させる必要があるそうです。

といってもまだよく分かりません。
今までの教員組織は「鍋蓋型」と呼ばれて来ました。
鍋のふたの上にちょこんと「校長・教頭」が乗っており、
残りの教員が横並び的に職務を分担するモデルです。
それに対し、東京都の人事改正は「ピラミッド型」と言われる、
トップから順々に下に降りていく組織構造です。
そのトップの下に位置づけられたのが主幹です。

主幹は、校長・副校長のサポートをしつつ、教壇にも立ちます。
職務命令を出すことも出来ます。

○指導教諭
これは、東京都ではH.24から導入されました。
こちらは職務がより具体的に示されており、

1.校内OJT
2.模範授業(年3回)
3.公開授業(他教員に対し。)
4.個別相談
5.授業支援(他教師の授業観察)
6.教科指導資料等開発

となります。
2と3の違いがよくわかりませんが、東京教師道場などでの模擬授業ということでしょうか。
ただし、校内における人材育成は、引き続き主幹が担うそうです。
指導教諭は、配置されない学校も多いため、自校や他校の主任教諭を指導する役割もあります。

○主任教諭
教諭の中でも、特に高度な知識又は経験を有する者だそうです。
H.24からは特に「教科主任」というものが導入されました。
今までの、学年主任や教科、生活指導、保険、養護などの主任をイメージすればよいのでしょうか。

以上がキャリアの概観です。
校長や副校長は、なんとなくイメージがありますが、学校におけるこのような「中間役職」はどうしても上手くイメージできませんね。

民間企業でいう、社長、副社長、部長、次長、課長、平社員のようなものでしょうか。

(それぞれ、校長、副校長、主幹、指導、主任、一般教諭)



都教委が出している「東京の先生になろう」では、様々な研修が紹介されています。
各キャリアに対しても、「主任教諭任用前研修」「主任教諭任用時研修」「主幹教諭任用時研修」「主幹教諭スキルアップ研修」などがあり、
必修研修である、「一年次(初任者)研修」「二年次研修」「三年次研修」なども考えると、ほぼ毎年のように研修が待っています。
主任は8年目から、主幹は早くて10年目からが想定されています。
その間にも、「東京教師道場」における研修や、「教職大学院・大学院派遣研修」などもあり、常に学び続ける環境が、外部的に用意されています。

各研修における「報告書」を考えるだけで、「書く書類が増えた」という悲鳴にも納得がいきます。

この現状を、「締め付け」と考えるのか「成長の場の提供」と考えるのかで気の持ちようが変わります。

僕は、向山洋一先生の著作を読んだばかりで、是非自分の授業研究は継続的に行っていきたいと思っていたのですが、そのような環境は「外部的に」用意されているようです。

こういった制度の批判としては、やはり教師間に差をつけられることで「一緒に働こう」という気持ちが減退してしまう、脱力感・無気力に繋がる、といったものがあるようです。

しかし、僕は確かに、いっぱい仕事をしてる人は給料が少し多くても良いと思うし、「学校」という場を自治体に与えてもらっている以上、「教えること」だけに一点集中するのもできないのではないかと思います。


後は、意見対立の中に、「学校に『民間』のやり方は馴染まない」といった、「公」VS「民間」の構図がありますが、

そうではなくて、もっと抽象的な「組織論」として、

「鍋蓋型」と「ピラミッド型」の組織の性質、規模や目的を考慮した適性、などを考えて、
一般的な「組織論」に落として議論した方がいいのではないかと思いました。

実際に現場に入ってみないと自分がどう感じるのかは分かりませんが、自分自身「成長していきたい」とは思っていますし、やはり、とりあえずは現存の制度を肯定的に捉えて職務に当たる必要があると思います。

その中で、変えていくべきと思ったことは、主張していく姿勢を持ちたいと思います。