dm-mnbの日記

このブログでは、教育関係のことなどを中心に、調べたことや考えたことなどを書いていこうと思います。

東京都教員採用試験論作文の傾向

論作文試験の対策をしたかったのですが、過去問分析についてあまり情報が得られなかったので、自分でまとめてみます。

 

東京都の一般選考の課題が対象です。

他県については、全然わかりません。

東京都の教員を目指す皆さんの助けになれば幸いです。

 

本エントリでは、とりあえず過去10年くらいの問題をみて、傾向などについて考えます。

対策については、また別のエントリでまとめたいと思います。

 

それではまずは、形式から。

 

形式:

AとBの2つのテーマが与えられ、どちらかを選んで作文します。

字数は、以前は1200~1500字程度でしたが、2014年度の問題から1000字以内に変更になりました。

時間も、90分から70分に変更になりました。

文字数は約67%に縮小、時間は約78%に短縮なので、少し余裕が増えたようです。

あまり関係ないですが、2014年度というのは、実際は2013年(H.25)に行われた試験ですので注意してください(僕は混乱してしまいます)。

 

内容:

結論から言ってしまうと、問われていることはほとんど毎年同じです。

特にテーマBでは、社会で生きていく力、コミュニケーション能力の育成について、本当に毎年問われています。

逆に、その問題については必ず受験生に考えていて欲しいということでしょう。

普段からしっかり自分の考えをまとめておくことで、試験で焦らずに回答でき、悔いの残らないものになると思います。

(2015年度で問われない可能性もありますが...)

 

テーマAでは、大きくまとめると、

生徒個人の能力をいかに高めていくか、

一人一人にしっかりと生きる力を身につけさせるためにはどうすればいいか、

ということが問われています。

具体的な内容もほとんど変わっておらず、

意欲的態度を育む、チャレンジ精神やねばり強さを養う、

確かな基礎力(知識•技能)と、それに基づく応用力、問題解決能力(思考力•判断力•表現力)の育成、

などです。

 

AもBも、過去の傾向を見ると、対策しておくべき内容は限られているといえます。

2015年度はわかりませんが、以上の内容を押さえておくことは必須でしょう。

逆に、東京都が求める人材像や今の学校が抱える問題も、ここから分かるような気がします。

 

それでは、テーマが選択制になった2006年度の問題から、古い順にテーマを並べていきます。

2005年度以前は、テーマは1つだったようです。

 

2006年度

A「一人一人の良さや可能性を伸ばし、個性を生かす」

B「思いやりの心や社会生活の基本的ルールを身に付け、社会に貢献しようとする精神を育む」

 

2007年度

A「『確かな学力』を身に付けさせるために、学ぶことの楽しさや意義を実感させ、学習意欲を高める」

B「豊かな人間関係を築く」

 

2008年度

A「学習と将来の生活との関連を図りながら、知識や技能を習得できるようにする」

B「学習や生活などに前向きに取り組む力のもととなる、健全な自尊感情を高める」

 

2009年度

A「言語活動を充実させ、言語に関する能力を高める」

B「夢や目標を描きながら、社会をつくる営みに積極的に取り組む」

 

2010年度

A「学ぶ意欲を高め、様々なことにチャレンジしながら成長する」

B「自他の生命を尊重する態度」

 

2011年度

A「基本的な知識•技能を確実に習得するとともに、思考力•判断力•表現力等を身に付ける」

B「よりよい人間関係を築く力や社会に参画する態度」

 

2012年度

A「学習意欲を高め、ねばり強く課題に取り組む態度」

B「自分に自信が持てず、将来や人間関係に不安を感じている生徒に対し、自信を持たせる」

 

2013年度

A「知的好奇心を高め、試行錯誤を繰り返し、様々なことにチャレンジしながら成長していく」

B「集団や社会の一員であることを自覚し、主体的に集団や社会の役に立とうとする態度を養う」

 

2014年度

A「知識や技能を活用して課題を解決するのに必要な、思考力•判断力•表現力を育む」

B「互いに理解及び信頼し、目標に向かって励まし合いながら成長できる集団」

 

 

適宜はしょっているので、気になる方は全文を参照してください。

こうしてみると、経年変化と共に表現は少しずつ変わっていますが、テーマとなっている教育の試みはほとんど変わっていません。

10年の間に社会背景も大きく変動してきたと思いますが、基本となる「教えること」「育てること」は変わらないものだということかもしれませんね。

 

やはりBでは、集団の中で調和を取れるようにする、

社会の中で自ら貢献していく志を持つ、

自信を持って他人と接する、

他者を思いやる心を持つ、などするには、どうすればよいかが問われています。

背景には、登校拒否やひきこもり、ニートフリーターの増加、キャリア教育の必要性などがあると思います。

他者を思いやる心は、いじめ問題、社会貢献などと繋がってくるでしょう。

 

Aでも、学習意欲の増加、「確かな学力」と応用力、問題解決能力としての思考力•判断力•表現力などを育てるにはどうすればよいかが毎年問われています。

背景には、日本経済の停滞、グローバル化による競争激化、学力低下問題、ゆとり教育批判などがあると思います。

問題解決能力などは、やはり社会に出てから生きていく力に繋がっていくでしょう。

 

なお、「『児童•生徒の実態を踏まえて』あなたの考えを述べなさい」という問題なので、社会的背景への言及は必要だと思われます。

しかしこれも2015年度からは、単に「あなたの考えを述べた上で」としか書かれていないので、必須であるかどうかは分かりませんが。

 

後半の段では、「教師としてどのように取り組んでいくか」という実践的な態度について書くことも求められています。「志望する校種•教科等に即して」とのことなので、より具体的な内容が必要です。

 

これらのことに関して、なぜ「意欲的な態度」や「思考•判断•表現」、

「社会貢献」などが求められているのか、の背景を考えることや、

高校理科の教科では、どのような実践的態度がありえるかを考えること、

すなわち対策の部分については、また別の機会にまとめたいと思います。

 

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次のエントリ

 

東京都教員採用試験論作文の課題背景その1 テーマB - dm-mnbの日記

 

東京都の教職教養過去問 2015年度版 (教員採用試験「過去問」シリーズ)

東京都の教職教養過去問 2015年度版 (教員採用試験「過去問」シリーズ)