教養教職試験におけるキーワード分析 頻出ワードランキング
本エントリでは、教職教養試験の対策を考えてみたいと思います。
ものすごく簡単な内容だけ。
東京都の教職教養試験では、最初の10問が教育法規に関する問題。
11問目〜27問目までの17問が、法規以外からの出題。
最後の3問が、校種別の問題です。
(この程度の情報すら、ほとんど手軽に手に入らないのはなぜ?)
理系出身の私には、全く馴染みのない世界が広がっています。
そのため、少しでもあたりをつけるべく、キーワードだけ抜き出してみて、頻出の順に並べ替えてみました。
該当する過去問は、2007年度〜2014年度までの8年分です。
では、以下に結果を掲載します。
出現回数 キーワード
5 レディネス
5 ヘルバルト
5 ピアジェ
4 形成的評価
4 ヴィゴツキー
4 ロック
4 レミニッセンス
4 プラトー
4 ブルーナー
4 ソーンダイク
4 スキナー
3 転移
3 総括的評価
3 診断的評価
3 孤立効果
3 ワトソン
3 ロールシャッハテスト
3 ルソー
3 ユング
3 ペスタロッチ
3 ピグマリオン効果
3 ハロー効果
3 デューイ
3 スペンサー
3 ゲゼル
3 キルパトリック
3 カント
3 エリクソン
3 TAT
2 遊戯療法
2 矢田部・ギルフォード性格検査
2 北条実時
2 箱庭療法
2 中心化傾向
2 行動療法
2 ローレンツ
2 ライン
2 フロイト
2 フレーベル
2 パーカースト
2 デュルケム
2 シュプランガー
2 コメニウス
2 コールバーグ
2 ゲシュタルト療法
2 ケーラー
2 クレッチマー
2 オーズベル
2 アドラー
2 P-Fスタディ法
1 林羅山
1 抑圧
1 問題解決学習
1 本居宣長
1 補償
1 文章完成法
1 板倉聖宣
1 発見学習
1 内田クレペリン療法
1 同一視
1 投射
1 投影法
1 単元学習
1 足利学校
1 綜芸種智院
1 相対評価
1 石田梅岩
1 石上宅嗣
1 精神分析学
1 世界図絵
1 森田療法
1 上杉憲実
1 昌平
1 昇華
1 緒方洪庵
1 児童の世紀
1 最澄
1 交流療法
1 個人内評価
1 芸亭
1 経験学習
1 系統学習
1 空海
1 金沢文庫
1 寛大効果
1 遠山啓
1 隠者の夕暮
1 愛と規律の家庭教育
1 ロジャーズ
1 ローゼンサール
キーワードの抽出は手作業でやったので、漏れがあるかもしれません。
それにしても、8年中4回とか5回とか出ているワードは、押さえておくのは必須のようですね。
頻出キーワードと、その周辺の知識については勉強しておいて損は無さそうです。
特に、学習の理論については必須のようです。
また、評価や心理テストなども多く問われているようです。
といっても、まだ勉強を全然始めていないので、どのキーワードがどの領域に属するのか、ピンときていない状態なのですが。
しかし、「教職教養は範囲が膨大なので、出題傾向を調べ、効率良く対策することが肝要だ!」と言われているにも関わらず、この程度の情報すら得にくいのはなぜなのでしょうか...
もちろん、単語の暗記になってしまって試験勉強する意味が全く無いので、勉強するからにはしっかし、有機的な関連をつけて勉強していきたいです。
次回以降のエントリでは、勉強したことを少しずつまとめていきたいと思います。
東京都教員採用試験論作文の課題背景その1 テーマB
前の記事に引き続いて、本エントリでは課題設定の背景を考えてみたいと思います。
まずは、内容がほとんどブレていないテーマBを取り上げます。
テーマAについては、また別のエントリにまとめます。
テーマBで問われている内容からキーワードだけ取り出すと、
1.思いやりの心、自他の生命の尊重、他者への理解・信頼
2.基本的ルールを守る、規範意識を持つ
3.自尊感情を高める、自信を持たせる
4.社会活動への参画・貢献、人間関係の構築
5.夢、目標を持たせる
などになります。
ここから逆に、このような問題意識を持っているのだと考えると、
「思いやりの心がない」「ルールを守れない」「自信がない」「社会活動に消極的で」「夢・目標がない」
子ども像、が浮かび上がります。
これは、本当なのでしょうか?
本題に入る前に、参考にした資料をまとめておきます。
まず、テーマの分析をして分かったのは、新学習指導要領の改定方針に沿った出題傾向であるということ。
そのため、改定当時の中教審の答申を参考にします。
また、実態の調査としては、毎年文部科学省が出している「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」が参考になります。
その他、国立教育政策研究所が出している調査結果も、興味深いです。
・「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について」(H.20, 中教審・答申, 以下、[学習指導要領改善答申])
・「平成24年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」について」(H.25,文部科学省, 以下、[問題行動調査])
・国立教育政策研究所各種資料
これらを中心に、以下で各項目を検討します。
抜けている重要資料があれば、ご指摘ください。
○ 現状分析
それではまずは、現状の把握から。
1. 思いやりの心
これは、暴力行為やいじめの件数などに表れていると考えられます。
暴力行為の発生件数は、[問題行動調査]によると、高校生ではほぼ横ばいで推移しているようです。
校内暴力が社会問題となったのは80年代の頃だったと記憶していますが、それ以来解決するべき重要な問題として考えられてきたのにも関わらず、件数が横ばいで推移しているということは、依然として解決困難な問題であり続けているということだと思います。
しかし、青年期の少年にとって衝動的に湧き上がるエネルギーを発散し、衝突させる壁としての「教師」の役割というのは大切だと思うし、暴力行為の全責任が加害生徒にあるものでもないと思います。
数字を見ても実態は全然分からないと思うし、やはり、自分で現場に出て対応してみないと何も分からないでしょう。
いじめの件数については、国立教育政策研究所の資料(いじめ追跡調査)がとても参考になります。
平成18年度に北海道、福岡といじめ自殺事件が相次いで問題となり、
いじめの定義が代わり、統計量の呼び名も「発生件数」から「認知件数」へと変わりました。
平成23年には大津市中2いじめ自殺事件が社会問題となり、それに伴って24年度のいじめの認知件数も急増しました。
これは大事なところで、文部科学省の調査では、「学校がどれだけ頑張って件数を調査したか」が結果に大きく反映されます。そのため、いじめが社会問題化した年とそうでない年で認知件数が大きくばらつくのです。
しかし、いじめ追跡調査によると、実態として、認知件数にピークが存在することは認められません。
さらに、「いじめはどの学校にも、どの教室にも、どの生徒にも起こりうる」という言葉の通り、加害者・被害者に全く関わらない生徒というのはほとんどいません。
いわゆる、「いじめっ子」「いじめられっ子」というステレオタイプは通用しないのです。
まずは、この現状をしっかり把握しておくことが大切です。
2. 規範意識
[学習指導要領改善答申]によると、小1プロブレムや学級崩壊などは、規範意識の欠如を表していると考えられています。
他にも、生活習慣の確立が不十分(「義務教育に関する意識調査」「児童生徒の食生活等実態調査(H.17,日本スポーツ振興センター)」「学校保健統計調査」)だという結果もあります。
「百ます計算」などを提唱し、現在は大阪府の教育委員長を務める陰山英男さんも、本当に大切だと言っているのは「反復学習」ではなく、「早寝・早起き・朝ごはん」という基本的生活習慣の確立です。
学校での生活だけでなく、家庭での生活環境こそが大切だということです。
また、全国学力・学習状況調査でも、基本的な生活習慣と学力には相関あり、という結果が出ています。
他には、不登校のうち、「あそび・非行」がきっかけというのも、規範意識と関連するでしょう。
[問題行動調査]によると、不登校のきっかけのうち、「あそび・非行」の占める割合は13.6%です。
不登校には、いじめ、人間関係への不安、学力不振、病気、無気力など様々なきっかけがあるうちの13%ですから、ここもどうにかしなければならない問題点の1つだと言えます。
3. 自信がない
4. 社会活動に消極的
5. 夢、目標がない
4.5.については、ひきこもりやニートといった問題が実態を表しているでしょう。
ニートについては高校の指導範囲を超えていますが、高校生活が大きく影響していること間違いないでしょう。
ひきこもりを含む不登校について、[問題行動調査]によると、平成10年(1998年)までは増加傾向にありますが、それ以降は増減しつつ大体同じ水準で高止まりしています。
平成24年度は、小・中学生については減少し、高校生については増加しています。
<高校生>
グラフを見比べてみると、中学生のグラフの形が、高校生に伝搬しているように見えます。これが正しいとすると、今後高校生の不登校生との数は、少しずつ減っていくのではないかと思います。
また、実態調査の分析については、これまた国立教育政策研究所の資料(不登校・長期欠席を減らそうとしている教育委員会に役立つ施策に関するQ&A)が非常に参考になります。
不登校の問題は、スクールカウンセラーの配置不足などではありません。
本当に大変な問題なのは、不登校として数えられている生徒のうち、約半数は復帰するなり卒業するなりしているのにも関わらず、次年度にはまた同程度の不登校が発生していることです。
また、いじめの状況と同じように、不登校も誰にでも起きる可能性があります。
教育政策研究所の資料は、現状を把握するための視点を色々与えてくれます。
また、平成19年の「低年齢少年の生活と意識に関する調査結果」(内閣府)によると、中学生の悩みや心配を抱える生徒数は増加しており、そのトップ2が「勉強や進学のこと」「友達や仲間のこと」です。
将来についてや、人間関係について悩みを抱える生徒が増えているということでしょう。
3.については、これが4や5の要因になっている、すなわち、自分に自信がないことが、漠然とした不安に表れていると考えられます。
○ 要因分析
要因といっても、ケースバイケースであって、特定できるようなものではないでしょう。
ここでは、[学数指導要領改善答申]から、背景要因の分析を紹介したいと思います。
大きく分けて、3つの要因があると考えられています。
(1) 社会全体、家庭・地域の変化
(2) 理念実現のための具体的な手立て(メソッド)の不十分
(3) 教師が子どもたちと向きあう時間の確保・環境整備の不十分
(1)では、核家族化や都市化が進んだことで、地域・家庭の教育力が低下したと考えられます。
特に、保護者自身ですら、「家庭でのしつけや教育が不十分である」(「低年齢少年の生活と意識に関する調査報告書」H.19内閣府)と考えている状況があります。
また、地域の連携が薄くなり、異年齢の子どもたちとの交流の場の喪失が起きたことや、自然体験の減少(「H.17年度青少年の自然体験等に関する実態報告」国立オリンピック記念青少年総合センター)も背景要因です。
そのため、「規範意識」や「他者や自然を思いやる心」が育ちにくくなっている、と考えられるでしょう。
社会変化としては。非正規雇用の増加や、大学全入時代の到来が挙げられています。そのため、将来への不安を感じたり、学校の学習と将来の関係の意義を見出だせなくなっているようです。
これが「社会への消極的な態度」「無気力、無関心」へと繋がり、不登校などの現象に結びついているのでしょうか。
(2)では、理念の共有、そもそも「生きる力」とは何か?なぜ必要か?の共通理解がなかったことが、まず背景的な問題として挙げられています。
「ゆとり」か「詰め込み」かの二項対立になってしまいがちですが、「生きる力」の目指したところはそれらの対立を生みません。
そのため、「調べ学習」「グループ学習」への理解が深まらず、「社会貢献」に繋がる教育にならなかったと考えられます。
また、社会・家庭の変化への対応が不十分であったことも挙げられます。
地域・家庭の教育力が低下する中、学校側も家庭や地域との新たな連携を模索する教育活動を展開させる必要があります。
と言われていますが、僕は実際に何をすればいいのか、よく分かっていません...
(3)では、将来や人間関係の不安を抱える子どもたちと向きあう時間の不足が問題となっています。
近年、提出すべき書類が増加し、教員の時間がどんどん失われていっているといわれています。
そのため、ICTを導入するなどして、業務の効率化、環境整備が必要だといわれています。
○ 感想
と、ここまで現状分析や背景要因と考えられることを書いて来ましたが、結局教員がやらなければならないこととは、「人格形成」という大目標の実現に対しての、不断の努力、アプローチなのではないのでしょうか。
問題現象に対して、場当たり的に対処する、というのではないような気がします。
それは社会背景が変わっても、同じなのではないでしょうか。
ただし、「現状の把握・認識」というのはとても大切だと思います。
しっかり勉強して、心の問題だけでなく、発達障害の問題、伝える技術の問題などにも意識が向くようにしていなければなりません。
もう1つ、どうしても考えておきたいことは、平成20年の時点では教員の労働環境の整備が必要だといわれていることに対して、どのような対処がなされたのか?ということです。
第3次東京都教育ビジョンでは、このことに関する施策が、ICTだけに集約されているように見えます。
第2次ビジョンの結果のまとめや評価、反省は行われたのでしょうか?2次の期間が終わったから3次を発足しただけなのでしょうか?そのときに深い調査、思索は行われたのでしょうか?
教職員の環境整備について、どうしても軽視されているような印象を受けます。
問題として挙げられた点は、解決されたのか、優先順位を下げたのか、そういった見解を示さないで次の施策に移るのは、無責任ではないでしょうか。
最後に、解決策については、とにかく「未然防止」と「初期対応(早期発見・早期対応)」だと言われています。
これらについても、教育政策研究所が出しているリーフレットがとても良いと思うので、そちらを見てみてください。
なぜ「未然防止」かというと、やはり、「誰が被害者になるかわからない」ということに尽きます。
解決策については、また別エントリでまとめ、自分の考えを深めていきたいと思います。
キャリアプランとしての都立高校教師
東京都知事選は、順当に舛添さんの当選となりました。
前回の記事の表は、なんとなく主要な順かなぁというので作ったのですが、
そのままの順の開票結果となり、大方事前の予想通りだったようです。
教育政策については、舛添さんは「競争的」教育を目指すのに対し、
宇都宮さんは「非競争的」教育を推しているのが対照的でした。
舛添さんに決まったことで、実際教育改革にどこまで口を出すのかは分かりませんが、「競争的」な雰囲気は作られていくでしょう。
それはもちろん教員にとっても同様で、
教員の現場にも「競争」が組み込まれていくと思います。
というよりも、すでに導入が進んでいます。
ここ2日で、元都立高校校長が書いた、対照的な2冊を読みました。
○『東京の「教育改革」は何をもたらしたか - 元都立高校校長の体験から』(渡部謙一)
○『都立高校は死なず - 八王子東高校躍進の秘密』(殿前康雄)
前者は東京都の教育改革に批判的な著作、後者は教育改革を共に積極的に進めた校長の著作です。
僕は、どちらかというと前者の意見のほうが共感できる部分が多いです。
「日の丸・君が代」の押し付け、職員会議からの「協議」の喪失(挙手・採決の禁止)、上意下達の指示伝達による現場の声の無視、教職員間に格付けをすることによる「協働」の分離化、などなど
後者についても、トップダウンの構造なしにボトムアップの構造なし、などの主張は、本当かな?とは思いますが、少し理解できます。
自分で考えなおさなければならない論点をいくつか得ることができました。
特に、「日の丸・君が代」についてはしっかり自分で勉強し、納得したいと思います。
本エントリでは、キャリアプランにも繋がる、「教職員の階層化」についてまとめたいと思います。
東京都では、「メリハリのある給与体系」実現のために、教員の役職をどんどん分化していく人事制度が採用されています。
背景は、一部の教員に負担が偏る場合がよく見られる状況で、全員一律の給与体系には問題があるのではないかということです。
そこで、給与に「メリハリ」をつけ、教員の意欲活性化に繋げようということらしいです。
2003年(H.15) 「主幹」(教諭と教頭の間)の全校導入
2006年(H.18) 「これからの教員の任用制度について」
校長を「統括校長」と「一般校長」に分化
教諭を「主任教諭」と「一般教諭」に分化
2012年(H.24) 「指導教諭」「教科主任」の導入
などの「改革」を行って、今の東京都教員組織の構成は
統括校長
校長
副校長(前の教頭)
主幹教諭、指導教諭
----------------
主任教諭
教諭
の6階層7役職になっています。
その他、専任でない(任期付きの)職として、専修実習助手、実習助手が存在します。
キャリアアップしないでずっと教諭職だった場合、46歳からは給料が上がらない仕組みになっています。
キャリアを上げていくには、各段階における任用選考に合格する必要があります。
どんな選考なのかなかなか分かりませんが、各段階の「任用試験」を受験するようです。
さて、それぞれの役職は何をするのでしょうか?
○主幹教諭
校長・副校長と教諭を結ぶ、「中間管理職」といわれます。
2008年(H.20)の「副校長・主幹教諭の育成及び職のあり方について」によると、
主幹教諭の職務は「監督」「人材育成」「調整」「校長・副校長の補佐」という4つの職責が付与されており、校長は、主幹に適切な校務を分掌させる必要があるそうです。
といってもまだよく分かりません。
今までの教員組織は「鍋蓋型」と呼ばれて来ました。
鍋のふたの上にちょこんと「校長・教頭」が乗っており、
残りの教員が横並び的に職務を分担するモデルです。
それに対し、東京都の人事改正は「ピラミッド型」と言われる、
トップから順々に下に降りていく組織構造です。
そのトップの下に位置づけられたのが主幹です。
主幹は、校長・副校長のサポートをしつつ、教壇にも立ちます。
職務命令を出すことも出来ます。
○指導教諭
これは、東京都ではH.24から導入されました。
こちらは職務がより具体的に示されており、
1.校内OJT
2.模範授業(年3回)
3.公開授業(他教員に対し。)
4.個別相談
5.授業支援(他教師の授業観察)
6.教科指導資料等開発
となります。
2と3の違いがよくわかりませんが、東京教師道場などでの模擬授業ということでしょうか。
ただし、校内における人材育成は、引き続き主幹が担うそうです。
指導教諭は、配置されない学校も多いため、自校や他校の主任教諭を指導する役割もあります。
○主任教諭
教諭の中でも、特に高度な知識又は経験を有する者だそうです。
H.24からは特に「教科主任」というものが導入されました。
今までの、学年主任や教科、生活指導、保険、養護などの主任をイメージすればよいのでしょうか。
以上がキャリアの概観です。
校長や副校長は、なんとなくイメージがありますが、学校におけるこのような「中間役職」はどうしても上手くイメージできませんね。
民間企業でいう、社長、副社長、部長、次長、課長、平社員のようなものでしょうか。
(それぞれ、校長、副校長、主幹、指導、主任、一般教諭)
都教委が出している「東京の先生になろう」では、様々な研修が紹介されています。
各キャリアに対しても、「主任教諭任用前研修」「主任教諭任用時研修」「主幹教諭任用時研修」「主幹教諭スキルアップ研修」などがあり、
必修研修である、「一年次(初任者)研修」「二年次研修」「三年次研修」なども考えると、ほぼ毎年のように研修が待っています。
主任は8年目から、主幹は早くて10年目からが想定されています。
その間にも、「東京教師道場」における研修や、「教職大学院・大学院派遣研修」などもあり、常に学び続ける環境が、外部的に用意されています。
各研修における「報告書」を考えるだけで、「書く書類が増えた」という悲鳴にも納得がいきます。
この現状を、「締め付け」と考えるのか「成長の場の提供」と考えるのかで気の持ちようが変わります。
僕は、向山洋一先生の著作を読んだばかりで、是非自分の授業研究は継続的に行っていきたいと思っていたのですが、そのような環境は「外部的に」用意されているようです。
こういった制度の批判としては、やはり教師間に差をつけられることで「一緒に働こう」という気持ちが減退してしまう、脱力感・無気力に繋がる、といったものがあるようです。
しかし、僕は確かに、いっぱい仕事をしてる人は給料が少し多くても良いと思うし、「学校」という場を自治体に与えてもらっている以上、「教えること」だけに一点集中するのもできないのではないかと思います。
後は、意見対立の中に、「学校に『民間』のやり方は馴染まない」といった、「公」VS「民間」の構図がありますが、
そうではなくて、もっと抽象的な「組織論」として、
「鍋蓋型」と「ピラミッド型」の組織の性質、規模や目的を考慮した適性、などを考えて、
一般的な「組織論」に落として議論した方がいいのではないかと思いました。
実際に現場に入ってみないと自分がどう感じるのかは分かりませんが、自分自身「成長していきたい」とは思っていますし、やはり、とりあえずは現存の制度を肯定的に捉えて職務に当たる必要があると思います。
その中で、変えていくべきと思ったことは、主張していく姿勢を持ちたいと思います。
教育政策からみる東京都知事選
気がついてみれば、東京都知事選がもう2日後ですね。
教育に関心があるものとして、特に都立学校の先生に興味があるものとして、今回の都知事選はとても重要です。
以前、都庁の方に都知事選について伺う機会がありましたが、
今回の都知事選で教育委員会の雰囲気もガラッと変わるだろう。
ビブリオバトルはなくなるだろうし、君も注目して見ておいたほうがいいよ。
とのお話でした。
主要と思われる5人の候補者について、それぞれの教育政策を表にまとめました。
(図1.各候補者の教育政策)
まずは、当選候補の舛添氏。
彼の主張は、「脱ゆとり教育」です。
-「脱ゆとり教育(子どもの学習進捗に合わせて現場で柔軟に学習内容を決めることができる教育、子どもの要求に合わせてどんどん学習できる教育)」とそのための中高一貫教育の拡充
とは主張の第一ですが、
そもそも「ゆとり教育」といわれた前学習指導要領下でも、子供の要求に合わせてどんどん学習できる教育はできたわけです。
そういう意味では、この目標は「脱ゆとり」にはなっていません。
本当に「ゆとり」を「脱」っさなければならないのか、というところからも疑問が残りますが、教育問題にはあまり力をかける余裕がなさそうです。
宇都宮氏は、最も教育政策を具体的に掲げています。
内容も、賛同できるものが多いです。特に、教員の待遇改善を掲げているのは宇都宮氏ただ一人です。
ただ、他の政策でも言われているように、「財源はあるの?」という疑問があります。
特に、無償化、奨学金給付、少人数学級、高校増設...などの実現は本当に可能なのでしょうか?
逆に、管理体制の緩和などは予算はかからないと思うので、是非実現してもらいたいと思います。
宇都宮氏は、政策をpdfでまとめていて、ページ数が全40ページと、他の政策についても具体案をたくさん出しています。
読んだ印象としては、「反安倍政権」「反石原都政」が目立ちます。
細川氏は、教育政策はなし。
よくも悪くも、現状維持でしょうか。
田母神氏も、具体案はほとんどありません。
ということで、石原都政を連想させます。
家入氏は、TwitterやFacebookで政策を募ったようで、他の候補者とは一線を画する、特徴的な政策が並んでいます。
ただ、気になったのは、「生徒の先生評価」「生徒は10日休める」などの、生徒側に自由なふるまいを認める政策。
教育の現場になじむのか、疑問が残るところです。
以上、まとめてみた感想です。
やはり「政策のみ」で選べば、宇都宮氏の教育政策が一番魅力的です。
しかし、実行力など、他の観点も含めて総合的に判断し、選挙当日に臨みたいと思います。
面白い理科、面白い物理
前回の記事に続き、東京都教員採用試験論作文の出題背景を調べているのですが、知らないことが多くてまだまだまとめきれません。
見切り発車で前回の記事を書いてしまいましたが、もっと別の観点でまとめた方がいいかもと思い始めました。
今日は気分を変えて、「理科が面白い」ことについて考えます。
僕は高校理科の免許を取得予定なのですが、理科の課題として、「いかに生徒に興味を持ってもらえるか」が挙げられます。
2006年のPISA調査でも、科学に対する興味・関心が低い、という結果が出ています。
先日、個別指導で担当する生徒の授業中に、こんな会話がありました。
その時間は国語の時間で、地球環境についての説明文を読んでいました。
「今の地球の大気はどこから来たのか?」がテーマでした。
いくつかの説があったのですが、例えば、宇宙空間にある大気成分が、地球の重力によって引きつけられて出来たという説。
しかしこれは、宇宙と地球の大気の成分の違いから否定されます。
次に、火山から出たガスによって出来たという説。
これは、約36億年前の岩石に当時の大気の痕跡が残っており、よっぽど急速に火山ガスが放出されたのでなければならないとして否定されます。
結局今では、地球形成時の隕石との衝突で、隕石内に蓄えられていた水などの成分が、衝突の衝撃で水蒸気として放出されたのではないかという説が有力だそうです。
そして最後に、植物の誕生によって酸素が放出され、今の成分になった、という話で終わります。
問題となったのは、火山の話になった時。
火山活動は地球のスケールに対して影響が少ないので、火山ガスが短期間で大気を作ったとは考えにくい、という説明が本文にありました。
そこで、「本当かな?火山ってどこにあるか知ってる?」
と発問しました。
日本、アルプス山脈らへん、アメリカにもあるよ、などど答えてくれました。
「じゃあ、なんでそこに出来るか知ってる?」
と聞きました。
もちろん、知らないと答えられないと思うので、プレートテクトニクスの説明、実は、海底にも火山があるんだという説明をしました。
プレートテクトニクスは、マントル対流が原因だという話もしました。
すると、
「地球が回ってるから、対流が起きてるんでしょ?」
と言われたので、
「違うよ、対流は地球が回ってなくても起こるんだよ。」
と言って、実は、層の中の温度差が対流を起こしている話、お湯や味噌汁を温めたときも、対流が起きている話をしました。
そうしたら、
「理科ってつまんねぇな」
と唐突に言われました。
ガーン
頭が真っ白になり、数秒間固まってしまいました。
実は、僕がこの話を初めて聞いたとき(さらには六角形の構造を作る話を聞いたとき)、とても面白いと思ったので、生徒にも話したのでした。
なぜ自分はこの話が面白かったのだろう。
なぜ僕の生徒にとってはつまらなかったのだろう。
平衡状態で定義される熱力学を学んだ後だから、対流の話が自分には面白かったのだろうか。
だとすると、やっぱり学べば学ぶほど勉強は面白くなり、何も知らない状態では、知識を聞くだけではつまらないのだろうか。
例えば、自分が中学生のときにこの話を聞かされたとして、確かに、つまらないと思ったかもしれません。
僕の話が長かったから、飽きちゃったのかもしれません。
この子と会話をしていると自分が学ぶことも多く、毎回の授業が闘いでありながらもとても楽しいです。
勉強は面白いと思ってもらえるように、まだまだ精進が必要です。
でも、理科ってなぜ面白いんだろう?
僕は、現象から自然法則の原理を発見し、その理論から新しい現象が予測され、それが確かめられる、というプロセスが、面白いと感じます。
だから、僕は式をいろいろいじって、その式がどんな現象を意味しているかを考えるのを見せるのが、面白いんじゃないかなぁと思います。
しかし、興味・関心を持たせるためには、実際に物を見せたり、実験をやることが重要だという話を聞きます。
実験は、自分自身はあまり楽しんだ記憶がありません。
やる場合には、しっかり準備して、理論が確かめられた喜びを感じるか、直感に反する現象が見れるような実験をやるべきでしょう。
「理科はなぜ面白いのか」、自分ではまだ答えは出ません。
追記:
「なぜ勉強するのか」「なぜ面白いのか」という問いには、答えは1つに絞れないのだと思います。
だから教員は、WhatやHowの部分、
あれが面白い、これが面白い、このように面白い、...
というのを積み重ね、たくさん提供し、
その中で1つでも生徒のアンテナに引っかかるものがあって、一部分でもいいから「面白い」と思ってもらうことを、目指すべきかなと思います。
東京都教員採用試験論作文の傾向
論作文試験の対策をしたかったのですが、過去問分析についてあまり情報が得られなかったので、自分でまとめてみます。
東京都の一般選考の課題が対象です。
他県については、全然わかりません。
東京都の教員を目指す皆さんの助けになれば幸いです。
本エントリでは、とりあえず過去10年くらいの問題をみて、傾向などについて考えます。
対策については、また別のエントリでまとめたいと思います。
それではまずは、形式から。
形式:
AとBの2つのテーマが与えられ、どちらかを選んで作文します。
字数は、以前は1200~1500字程度でしたが、2014年度の問題から1000字以内に変更になりました。
時間も、90分から70分に変更になりました。
文字数は約67%に縮小、時間は約78%に短縮なので、少し余裕が増えたようです。
あまり関係ないですが、2014年度というのは、実際は2013年(H.25)に行われた試験ですので注意してください(僕は混乱してしまいます)。
内容:
結論から言ってしまうと、問われていることはほとんど毎年同じです。
特にテーマBでは、社会で生きていく力、コミュニケーション能力の育成について、本当に毎年問われています。
逆に、その問題については必ず受験生に考えていて欲しいということでしょう。
普段からしっかり自分の考えをまとめておくことで、試験で焦らずに回答でき、悔いの残らないものになると思います。
(2015年度で問われない可能性もありますが...)
テーマAでは、大きくまとめると、
生徒個人の能力をいかに高めていくか、
一人一人にしっかりと生きる力を身につけさせるためにはどうすればいいか、
ということが問われています。
具体的な内容もほとんど変わっておらず、
意欲的態度を育む、チャレンジ精神やねばり強さを養う、
確かな基礎力(知識•技能)と、それに基づく応用力、問題解決能力(思考力•判断力•表現力)の育成、
などです。
AもBも、過去の傾向を見ると、対策しておくべき内容は限られているといえます。
2015年度はわかりませんが、以上の内容を押さえておくことは必須でしょう。
逆に、東京都が求める人材像や今の学校が抱える問題も、ここから分かるような気がします。
それでは、テーマが選択制になった2006年度の問題から、古い順にテーマを並べていきます。
2005年度以前は、テーマは1つだったようです。
2006年度
A「一人一人の良さや可能性を伸ばし、個性を生かす」
B「思いやりの心や社会生活の基本的ルールを身に付け、社会に貢献しようとする精神を育む」
2007年度
A「『確かな学力』を身に付けさせるために、学ぶことの楽しさや意義を実感させ、学習意欲を高める」
B「豊かな人間関係を築く」
2008年度
A「学習と将来の生活との関連を図りながら、知識や技能を習得できるようにする」
B「学習や生活などに前向きに取り組む力のもととなる、健全な自尊感情を高める」
2009年度
A「言語活動を充実させ、言語に関する能力を高める」
B「夢や目標を描きながら、社会をつくる営みに積極的に取り組む」
2010年度
A「学ぶ意欲を高め、様々なことにチャレンジしながら成長する」
B「自他の生命を尊重する態度」
2011年度
A「基本的な知識•技能を確実に習得するとともに、思考力•判断力•表現力等を身に付ける」
B「よりよい人間関係を築く力や社会に参画する態度」
2012年度
A「学習意欲を高め、ねばり強く課題に取り組む態度」
B「自分に自信が持てず、将来や人間関係に不安を感じている生徒に対し、自信を持たせる」
2013年度
A「知的好奇心を高め、試行錯誤を繰り返し、様々なことにチャレンジしながら成長していく」
B「集団や社会の一員であることを自覚し、主体的に集団や社会の役に立とうとする態度を養う」
2014年度
A「知識や技能を活用して課題を解決するのに必要な、思考力•判断力•表現力を育む」
B「互いに理解及び信頼し、目標に向かって励まし合いながら成長できる集団」
適宜はしょっているので、気になる方は全文を参照してください。
こうしてみると、経年変化と共に表現は少しずつ変わっていますが、テーマとなっている教育の試みはほとんど変わっていません。
10年の間に社会背景も大きく変動してきたと思いますが、基本となる「教えること」「育てること」は変わらないものだということかもしれませんね。
やはりBでは、集団の中で調和を取れるようにする、
社会の中で自ら貢献していく志を持つ、
自信を持って他人と接する、
他者を思いやる心を持つ、などするには、どうすればよいかが問われています。
背景には、登校拒否やひきこもり、ニートやフリーターの増加、キャリア教育の必要性などがあると思います。
他者を思いやる心は、いじめ問題、社会貢献などと繋がってくるでしょう。
Aでも、学習意欲の増加、「確かな学力」と応用力、問題解決能力としての思考力•判断力•表現力などを育てるにはどうすればよいかが毎年問われています。
背景には、日本経済の停滞、グローバル化による競争激化、学力低下問題、ゆとり教育批判などがあると思います。
問題解決能力などは、やはり社会に出てから生きていく力に繋がっていくでしょう。
なお、「『児童•生徒の実態を踏まえて』あなたの考えを述べなさい」という問題なので、社会的背景への言及は必要だと思われます。
しかしこれも2015年度からは、単に「あなたの考えを述べた上で」としか書かれていないので、必須であるかどうかは分かりませんが。
後半の段では、「教師としてどのように取り組んでいくか」という実践的な態度について書くことも求められています。「志望する校種•教科等に即して」とのことなので、より具体的な内容が必要です。
これらのことに関して、なぜ「意欲的な態度」や「思考•判断•表現」、
「社会貢献」などが求められているのか、の背景を考えることや、
高校理科の教科では、どのような実践的態度がありえるかを考えること、
すなわち対策の部分については、また別の機会にまとめたいと思います。
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